作品紹介チック・コリア(chick corea)のHumpty Dumptyの分析など
今回は、chick coreaのHumpty Dumptyの分析をします。
この曲はチック・コリアの曲によく使われるコード進行の要素が満載で、とても参考になります。
作品紹介のコーナーでは、私が日々音楽を聴いていく中で良いと思ったものも、悪いと思ったものも、どちらも紹介します。私の感想、曲の分析、曲のできた背景、作曲者などについてまとめています。
今回は作曲者については割愛します。この曲が最初に収録されたアルバムは「The Mad Hatter」で、メンバーはチック・コリア、スティーブ・ガット、ジョー・ファレル、エディ・ゴメス、1978年の作品です。
譜面とコード進行
以下が私が作成したこの曲の譜面とコード進行、およびその分析です。
この曲は、曲を通しての調は明確にはなく、頻繁に転調しているのですが、いくつかの特徴を見出すことができます。
・1~4小節
ここはメジャーコードの半音階での下降が二つ並んでいる形で、響きとしてはEbM7がDM7に、F#M7がFM7に解決しているような雰囲気です。理論的には、説明しにくいのですが、いずれも前のコードが後のコードに対するドミナントコードの代理和音の構成音を多く含んでいるので若干そのように聞こえる、といえるかもしれません。この4小節は、調がDメジャーからFメジャーに転調しており、このような短三度での移調はこの曲を通して多用されています。
・5~10小節目
ここでポイントなのは、BbM7です。私はこのコードはD/Bbとみてもいいと思います。響き的に直前のA7から解決しているような印象があるからです。そして、そのあとのBbm7はDメジャーのサブドミナントEm7の代理コードです。
・11~16小節目
ここは、前半がDメジャーを中心としていたのに対し、ここは大胆に分析するならF#メジャーといっていいと思います。理由はのちに説明します。そしてここでは、前半にもあった短三度での転調が繰り返されています。
・17小節目
はい、ここでF#M7が現れます。これは、Abm7をサブドミナントとした場合のトニックで、ここを見ると、11小節目のDm7がAbm7の代理和音に見えます。そして、途中のDm7やFm7は短三度での転調による進行の経過和音と考えることができます。(とても大胆ですが、、)そして、最後のBb7は明らかに冒頭のEbM7に行くためのドミナントです。
・コーダ
ここは、冒頭でF#メジャーからBメジャーに転調し、そのままBメジャーで行くかと思いきや、コーダの5小節目からEbmに転調します。最後の小節はEbm7から短三度ずつ下降するという恒例の進行です。
・まとめ
この曲は、短三度の転調と半音階でメジャー7thを下降するという、二つの特徴的な進行が多く使われていました。これらは、ジョン・コルトレーン系のモードジャズにおいてよくつかわれる、アウトフレーズとも共通点があり、その影響は明らかです。また、11小節目からの動きは、メロディーがディミニッシュスケール的な響きを想起させるもので、短三度での転調には、ディミニッシュスケールが関係していると思われます。